メゾン・シャール・ブルジェーは、1860年より、何世代にもわたり、ルイ王朝時代から所有するオリジナルデザイン版を元に、当時のデザイン生地を忠実に再現し続ける、フランス老舗生地メゾンです。
フランス第二帝政が栄華を極めている時期、ロシア宮廷の行商人だったブルゲル氏は、ガルニエ宮近辺の行商地区において生地屋を設立しました。そこで、フランスを訪れるヨーロッパ各国の宮廷人にフランスが誇る美しい生地を売り始めました。
第一次世界大戦後、ブルゲル氏の息子のシャルルは、ヨーロッパ諸国をメインマーケットとした事業を引き継ぎ、さらに、戦時中の塹壕においてブルンシュヴィグ大佐およびヴィダル氏と結んだ友情をきっかけに、米国への輸出事業もスタートしました。
メゾン・シャール・ブルジェは、その後、孫であるフランシス・ポルシェが妻とともに事業の運営にあたり、世界中のフランス愛好家に愛され続ける生地として、その事業はどんどん大きくなっていきました。
今日、メゾン・シャール・ブルジェの5世代目となるマリー=ノエルとマルク=ポルシェは、イギリス王室、オランダ王室、アブダビ王室、ベルギー王室、スイス王室など、各国ロイヤルファミリーへ生地を納めており、モスクワのフランス大使館や、マダム・ドゥ・ロスチャイルドの息子様に依頼され、マダム・ドゥ・ロスチャイルドの寝室の室内装飾を手がけ、旧皇帝住居のビアリッツのホテル・デュ・パレのロトンダの室内装飾を担当するなど、最も多くのロイヤルファミリーに愛される生地として、今なおフランスが誇る最高品質のフランス伝統生地を作り続けています。
豊富な技術と芸術性を備えるプリント生地のスペシャリスト、メゾン・シャール・ブルジェは、何百年にも渡り培われてきたプリント技術を用い、今なお、その生きた技法を守り続けています。最も歴史のあるインテリアファブリックのメゾンとして、他とは一線を画す技術だけでなく、代々受け継がれてきた豊かなオリジナルデザイン版を守り、メゾンが所有する最高品質のプリントツールを用い、人の手で作ることができる最も美しい生地を作り続けています。
オリジナルデザイン版:数十立方メートル分ものスペースに、ルイ王朝時代から所有するオリジナルデザイン版が、大切に守られ保管されています。それらは、メゾンの魂でもあり、芸術的遺産、そしてフランス芸術におけるインスピレーション源を構成しています。
プリントツール:メゾン・シャール・ブルジェーは新旧併せてプリント用の版、輪郭罫、胴の所有に加えて、紋様・図柄のプリント・機織専用のデータも持ち合わせています。
プリントノウハウ:メゾン・シャール・ブルジェーの一番のノウハウは、特定の紋様をプリントする際に、最適な素材・ツール、最高の技術、そして最良の職人を厳選することにあります。
プリント生地の極意:古い生地をプリントするには、図柄の歴史的背景を引き出す最も美しい仕上がりを求めて、紋様、素材、プリント法・機織技術をまるで錬金術のように融合させる必要があります。
メゾン・シャール・ブルジェーでは様々なノウハウを掛け合わせ、多種多様な技術を駆使しています。
つまり、プリント生地業者の実力は、古い紋様を尊重しつつ、その生地の表情を現代が求める姿へと仕上げる必要があります。技術的知識、そして創造性を活かして、お客様の視覚をはじめ五感に訴える、これまで体験されたことがない感覚をご提供致します。現代にプリントされた生地は、片面において素材・見た目・手触り、もう一面においては紋様と色彩が精緻に合わさった歴史と技術の賜物です。
全ての作業はオリジナルデザイン版からデザインを選ぶことから始まります。特に、メゾンの色を生かしたオリジナルデザインの選択を心掛けます。しかしお客様からのご要望によっては、その品物、美術館の所有品、提携先の提案を取り入れるケースも存在します。次に、図柄・紋様の「トレーシング」に移ります。「トレーシング」とは紋様を分解して、使用されている色彩および線画の細さを特定する作業のことを指します。そして紋様、歴史的背景、希望の仕上がりによって次の物を選びます。
この段階は非常に重要であり、メゾンの全ノウハウが注ぎ込まれます。同一の紋様であっても、プリントに使用される生地素材によっては、まったく異なる仕上がりとなり、そこに宿る精神も、また違ったものとなります。例えば、繊細なルイ16世時代の図柄の場合は、サテンやシルクまたは綿のパーケールに描かれることによって、オリジナルデザイン版のイメージは最大限に活かされます。しかしルイ14世時代の図柄となると、より重量感のある麻や交織織物に描くほうが適切です。そしてプリント法、または、織り方に基づいて、メゾン・シャール・ブルジェーはアーカイブスに新たな命を吹き込むための提携先を選びます。つまり プリント生地業者は紋様とお客様からのご要望を基に、様々なプリント工程を決定していきます。
そして最後にプリント後の確認においては、生地の仕上がりの見た目・手触りを左右する、極めて重要な工程を担っています。一例として、プリントされた生地にはモアレ加工、光沢付け、シワ加工を施すことが可能です。
プリント生地は次の8段階で構成されています。
メゾン・シャール・ブルジェーは、家族経営の情熱を持った プリント生地業者であり、150年前から、洗練されたデザイン生地を好む方々に、美しい織物やプリント生地を提供しています。メゾンの有する豊富なオリジナルデザイン版は、特にルイ13世時代からルイ18世時代の紋様のデザインを多く所有しています。
ルイ13世生地:主に小柄な紋様のタピスリーや絹織物。
ルイ14世生地:大柄な紋様の織物またはプリント。ダマスク、ブロカード、生命の木、大きな花束などが描かれ、色彩も鮮やか。王が裕福な時代でもあり、それを誇示しています。
ルイ15世生地:ダマスクがランパ、ブロカテルとなり、図柄はより細く、曲線的なものに進化し、色彩にも多くのニュアンスが取り入れられます。「シノアズリ」が芸術家のインスピレーションを刺激。
ルイ16世生地:張られたシルクに「シノアズリ」が描かれ、図柄もさらに細く進化。直線的な、整然とした線画が好まれ、色彩は涼しげかつ繊細。
第一帝政時代:ヨーロッパ全土で発掘が行われ、自身の歴史に遭遇。エジプト、ギリシャ、古代ローマが生地に描かれ、ポンペイの発見が多くの芸術家に影響を及ぼします。
王政復古時代:歴史の影響を受け続ける中、豊穣の角、花束、果物、穀物が多く登場。
第二帝政時代:フランスが世界最大の経済権力に成長。主にベルベットといった、重量感のある生地が使用され、豊富な色使いの紋様が全体に施されています。ルイ・ナポレオンが英国育ちであることから、英国の影響でもある花束が見受けられます。壁も、風景が描かれた壁紙で覆われるようになります。
メゾン・シャール・ブルジェーの由緒正しいプリント生地は、フランスの生地製品の歴史そのものです。
歴史を経て、一部地方では特殊なノウハウが誕生しました。
北部地方、綿製、麻製、毛糸製のベルベットなどといった「重い」生地の機織職人が主流です。
ヴォージュ山地は生成り生地の機織の発祥地であり、ヨーロッパ全体の供給元となっています。
リヨン地方はシルクの機織が特産であり、素晴らしいまでの軽やかかつ滑らかなベールを生産しています。他にも染色、プリント、生地の仕上げ技術も有しています。そして同時にカーボン繊維やケブラー繊維もここで織られています。
アルザス地方、マイエンヌ地方、ローヌ地方はプリント生地の産地です。
メゾン・シャール・ブルジェーは、1860年より、歴史ある生地の製作技法を持つフランス各地を訪れ、そのノウハウを習得してきました。そして、フランス国内、近隣ヨーロッパの優秀な職人と提携し、美しい歴史的生地の再現に努めてきました。
メゾン・シャール・ブルジェーは、生産過程の全てを監督しています。プリントされる図柄や紋様の選別に始まり、プリント用の生地の選択、最終製品とその品質管理に至るまで、全てを統轄しています。メゾンの染色では、オリジナルデザインの配色を厳密に遵守しています。毒性が危惧されているため、欧州連合によって禁止されている当時の染料に関しては、技術者と調色者が協同で模索し、色の再現に努めています。シャルル・ブルゲル・メゾンのサプライヤーや提携先は全てフランスまたはヨーロッパの企業であり、稀少なノウハウを有しています。本産業の大部分は今でも職人によって構成されており、卓越した技術を維持するためにも、メゾンは徹底した人選を努めています。
大量生産とは遠く離れたこの産業では、多くの条件を常に満たす必要があり、日々が心躍るような挑戦に溢れています。
メゾン・シャール・ブルジェーは、現在では、自然素材へのプリントだけでなく、不燃規準対応生地の採用を義務付けられている施設(美術館、ホテル、城など)の需要にも応えられる数少ない生地メーカーです。規準に対応しているクラシカルな図柄においては最大のコレクションを誇ります。
フランス、そして世界中にて、メゾン・シャール・ブルジェーは、お客様のインテリアコーディネートをサポートします。素朴な演出から豪華な仕上がりのものまで、完璧な品質、独自の仕上がり、そして安全な仕上がりを約束します。
メゾン・シャール・ブルジェーは1860年より、豊富なアーカイブスを蓄積してきました。数百点の図柄、紋様、生地が、一族の一員でありパリで骨董屋を営んでいたヴィダル氏によって20世紀初頭より収集・分類・管理されてきました。今日では、過去に印刷されたものだけでも2000点の図柄が一族のアーカイブスとして管理されており、その上、時代を追って収集された、更に2000点がメゾンの宝となっています。この「宝」は、5世代目のマリー=ノエルとマルク=ポルシェにより、展示会や様々な場所へ足を運ぶことにより、より充実し続けています。それによりメゾン・シャール・ブルジェーの品揃えは常に進化し、毎年200点が活用されています。
「トワル・ド・ジュイ」とは人物を描いた紋様を使用しているプリント生地を指す一般名称となっており、今日ではモノクロームの図柄の印象が強いものの、本来は多色彩でした。
ここで少し18世紀中頃までさかのぼってみましょう。
ドイツの染色職人の一家に生まれたオーバカンフ氏は、スイスおよびドイツにて数年修行した後、印刷技術の特産地でもあったミュルーズにて版画家・印刷屋として就職します。半年の滞在後、パリに移住。そして間もなくして、ジュイ=アン=ジョザースにて、後にオーバカンフ製作所となる施設の経営陣に迎え入れられます。製作所を一から立ち上げ、1760年に施設が完成します。
当時、プリント生地は大変流行しており、パリおよびヴェルサイユとの近い距離も幸いし、オーバカンフ氏は日々増えていくオーダーの需要に対応しなければなりませんでした。製産過程はプリント版で行われ、紋様はインド更紗から直接インスピレーションを得ています。
しかし製造量と製造速度を上げる必要性から、一回で約1平方メートルを印刷できる凹版印刷用の銅板が登場しました。
1783年、時を同じくし、スコットランド人のトーマス・ベル氏が凹版印刷用ローラーを使用した印刷機を開発。最先端技術に目のないオーバカンフ氏はすぐさま一台を取り入れ、現地の金具製造業者のルフェーヴル氏の助けを経て、独自の変更を追加します。
オーバカンフ製造所は1797年、凹版印刷用胴を用いる初の施設となります。版が胴に書き写され、繊細さ、色彩の深み、プリントの精度、製造所の生産力が、かの有名なトワル・ド・ジュイの誕生のきっかけとなります。
新商品は人気を博し、パリだけでなくフランス全土でトワル・ド・ジュイが大きな注目を集めます。更には国王が、自らの治世を地方にまで誇示するために、様々な場面をプリントすることで、トワル・ド・ジュイは宣伝品としても使われるようになります。
1821年には、製造所は1237人ものスタッフを雇い、一日あたり5000メートル分もの生地の製産を誇ります。
メゾン・シャール・ブルジェーは、オーバカンフ氏のオリジネルデザイン版を保管する2つの施設のうちの1つです。現在でもプリントに使用できる状態にあるデザイン版を14版を所有しており、この唯一無二のフランス遺産は今日でも大事に保管されています。
現在、ジュイ=アン=ジョザースのオリジナルデザイン版を再度プリントする際、メゾン・シャール・ブルジェーは常に本来のサイズを遵守することを優先しております。現代の製造技術やツールを使用する場合、紋様やサイズを修正することでプロセスを簡易化できるものの、それでは生地の本来の歴史的な精神、描いた芸術家たちの記憶が失われてしまうため、メゾン・シャール・ブルジェーではこの決断を頑なに貫いています。